英文契約書作成ポイント:グッド・スタンディング(Good Standing)

はじめに

2012年にビッグニュースとなったIPOに伴って、フェイスブックが引受証券契約を米証券取引委員会に提出した。その契約における、フェイスブックの表明保証条項の一つは、下記の通りである:

The Company has been duly incorporated, is validly existing as a corporation in good standing under the laws of the State of Delaware

日本の弁護士はよく、この手の表明保証条項を見たときに、会社が法的問題なしにビジネスを運営していることを意味する一般的な条項であると思いがちである。しかし、それは合理的な推測ではあるが、正しい理解ではない。アメリカ州法の下では”good standing”とは、コーポレーションやその他の法人にとっての特殊な法的状態を指すのである。では、この法的状態とは実際にどのようなものか?

“Good Standing”とは?

“Good standing”は州法の下での特殊な法的状態のことを指すため、厳密に言えばそれは州ごとに異なる。多くの会社(フェイスブックを含む)がデラウェア州で設立されているため、アメリカの企業弁護士(corporate lawyer)は多くの場合、デラウェア州法の下でコーポレーションがgood standingの状態にあるかを確認することとなるが、ニューヨークやカリフォルニアも重要な州である。なお、LLC(Limited Liability Company)に適用されるgood standing規則はコーポレーションに適用される規則とやや異なるが、一般的な原則は同じように当てはまる。

デラウェア州法の下では、コーポレーションは毎年franchise tax(事業免許税に近いもの)を支払い、報告書(franchise tax report)を提出する。Franchise taxとは基本的に、コーポレーションがデラウェア州で設立したことに対して支払う税金である。もしコーポレーションがfranchise taxを支払わなかったり、報告書を提出しない場合、デラウェア州法の下ではそのコーポレーションは”void”(無効)になる。

更には、デラウェア州で設立されたコーポレーションは、”registered agent”をデラウェア州に置いておく必要がある。Registered agentとは、デラウェア州において訴状受領代理人としてコーポレーションから法的に選任された、個人もしくは法人である。つまり、デラウェア州で設立された全てのコーポレーションは、法人に代わって訴状を受け取る個人または法人をデラウェア州に置いておく必要があるのだ。もしコーポレーションが、デラウェア州にregistered agentを置くこと/置き続けることが出来なかった場合、それはデラウェア州の下では”forfeit”(権利喪失/失効)となる。

もし会社がvoidもしくはforfeitになった場合、その会社はデラウェア州の下ではgood standingではなくなる。

コーポレーションがGood Standingの状態ではなくなると、どうなるのか?

会社がgood standingの状態ではなくなると、様々なマイナスの影響が出てくる。例えば、会社の名前に対するデラウェア州法のプロテクションがなくなるため、誰かが同じ名前の新しい会社を設立することができる。

更に、good standingの状態ではなくなった会社は、デラウェア州裁判所へ訴えを起こすことが出来なくなる他、Certificate of Merger(合併申請書)などを含む大半のcertificate(州務長官へ提出する書類)を提出することが出来なくなる。つまり、もし合併を遂行しようとしても、対象会社がgood standingの状態ではなければCertificate of Mergerを提出することが出来ず、対象会社がgood standingの状態へ戻るまで合併取引をクローズすることが出来ないことになる。

どのようにコーポレーションをGood Standingの状態に戻すのか

実はコーポレーションをgood standingの状態へ戻すのは比較的簡単な場合が多い。デラウェア州における基本的なプロセスは下記の通りである。なお、多くの州でも同じようなプロセスとなっている。

  1. 未納税、追徴課税や罰金を支払う
  2. デラウェア州でregistered agentを指名する(まだregistered agentを置いていない場合)
  3. デラウェア州州務長官へ簡単な書類を提出する

多くの場合、上記のプロセスは早く終わる。

ニューヨーク、カリフォルニア、その他の州

ニューヨーク、カリフォルニア、その他の州でgood standingの状態を維持する基本的なルールは、デラウェア州のものと非常に近い。Good standingの状態が維持できない場合のペナルティーは州ごとに異なるが、多くの場合、コーポレーションがgood standingの状態へ戻るのは早く、簡単である。

Good Standingの証明

コーポレーションがgood standingの状態にあれば、その証明を得るのは容易な場合が多い。デラウェア州では、少額のフィーを払えば“Certificate of Good Standing”が発行される。急ぎの場合でも、デラウェア、ニューヨーク、カリフォルニア、その他多くの州では、24時間以内に(もしくはより短時間で)証明書を発行してもらえる。

ちなみに、ニューヨークやカリフォルニアでは、“Certificate of Good Standing”ではなく“Certificate of Status”と呼ばれるが、基本的なコンセプトは一緒である。

アメリカでは、様々なビジネス取引(例えば証券発行やローンの借入、商取引など)においてコーポレーションのgood standingを証明するよう求められることがある。これは一般的な流れであり、good standingの証明を得るのは容易かつ時間もかからないため、もし当該コーポレーションが証明書の提出を拒否したり、提出出来ない場合、取引の相手方は、何か重大な問題が発生したのではないかと懸念することになる。

幸い、先に述べたように、good standingの問題は素早く解決される場合がほとんどである。

その他の参考資料

デラウェア州州務長官は、good standingに関する有益な情報を開示してくれている(英語のみ):

デラウェア州の発行するCertificate of Good Standing(good standingの証明書)について、例をご覧になりたい方はこちら

 

モンローシェリダン・リードモンローシェリダン・リード
外国法事務弁護士(米国ニューヨーク州)
慶應義塾大学 法科大学院 特任講師
info@monroe-legal.com
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