米国法・英文契約書作成のポイント: 準拠法のインパクト (パート2)

Governing Law (準拠法)

英文契約の準拠法

英文契約作成のポイント:準拠法
ニューヨーク州法の下では詐欺の取り扱いは
どうなっているだろう。

準拠法は、米国法での法人契約に驚くほど大きな影響をもたらすことがある。先週の投稿では、ニューヨーク、デラウェア、カリフォルニア州法によるthe statute of limitations for breach of contract(契約違反の提訴期限)に対する扱いの違いについて述べたが、これはM&A取引もしくは契約当事者が補償に関して特定の時間枠を交渉したいと考える取引において重要な事項となろう。

この投稿では、ニューヨーク、デラウェア、カリフォルニア州法におけるその他二つの重要な違い、すなわちtreatment of fraud(詐欺の取り扱い)および”sandbagging”(サンドバッギング)について述べていきたい。

詐欺

M&A取引では大抵の場合、各当事者の賠償責任に対する上限が買収・合併契約書に記載されている。もし当事者Aが契約違反につき当事者Bを訴えた場合、当事者Aが当事者Bから得ることの出来る賠償金には一定の上限がある場合が多いのだ。

とはいえ、それには例外もある。典型的な例外として、詐欺をはたらいた当事者から得られる賠償金には上限がない。では、どういったものが詐欺に当たるのだろう?その答えにあなたは驚くかもしれない。

M&A取引に携わったことのある法律専門家であれば、M&A取引におけるrepresentations and warranties(表明保証)は多くの場合”リスク分担”を基に交渉されていることをご存知だろうが、時には、売り手が関連リスクを分担するためだけに正しくない表明保証を入れ込むことに合意してしまうこともある。

売り手はこれらの表明保証に注意すべきである。米国では、売り手による真実ではない”reckless”(無思慮な)表明保証の合意に対して、買い手が詐欺であると主張したケースもあるのだ。更に、売り手が明確に買い手を欺く意思がなかったとしても、case law (判例法)では、デラウェアの裁判所がこのアプローチにつき認め得ると示唆してもいるのだ。

対照的に、ニューヨークの裁判所ではこの手の議論は却下されることが多い。ニューヨークではこのような詐欺の主張は大抵の場合、売り手が(単に”無思慮”であったことだけではなく)表明が真実ではないと「知っていた」こと、「かつ」売り手が他方当事者を欺く意図があったことを要件としている。

カリフォルニアのアプローチはデラウェアの基準と近い。ニューヨークと比べて、無思慮な不当表明に基づく詐欺の主張は通る可能性が比較的高い。

サンドバッギング

M&A取引では、買い手が売り手の表明保証に違反があることを知りながらも当該取引を実行し、事後に虚偽の表明保証に基づき売り手に対し補償請求をすることがある。アメリカのM&A弁護士はこれを”sandbagging” (サンドバッギング)と呼んでいる。

契約によっては、当事者が契約締結前に真実ではないことを知っていた表明保証に基づく補償請求をすることが出来得る(もしくは出来ない)と明確に記載されるが、デラウェア、ニューヨーク、カリフォルニアはどれも契約がそのような主張を明確に認めている(もしくは認めていない)のであればその契約を許可する。

もっとも、時には契約が不明確であったりこの点について一切書かれていないこともあるが、裁判所はこのようなケースにつきどのように述べているのだろう。

デラウェアでは一般的に”リスク分担”アプローチをとっており、当事者が契約締結前に違反について知っていたとしても表明保証違反の主張を認めている。対照的にカリフォルニアでは一般的に、その当事者が表明保証が真実であることに依拠していたことを示す必要があるとしているため、締結前に表明保証が真実ではないとすでに知っている当事者にとっては、カリフォルニア州法のもとでこの点に基づき補償請求をすることが難しくなろう。

ニューヨークのアプローチはより複雑である。あるケースでは、当事者が締結前に表明保証が真実ではないと知っていた場合でも表明保証に違反していると主張することが可能である。しかし、もし当事者Aが表明保証が真実ではないことを当事者Bによる情報提供により知っているのであれば、ニューヨーク州法のもとでは当事者Aはこの点につき当事者Bを契約違反で訴えて勝つことが出来ないだろう。一方、当事者Aが表明保証が真実ではないことにつき第三者や他の方法を通じて知ったのであれば、ニューヨーク裁判所では勝つことが出来るかもしれない。

結論

多くの場合、ニューヨーク、カリフォルニア、デラウェアの中でどの州法を選択するのかは法人契約には大きな影響を及ぼさないが、前回と今回の投稿で述べた通り、特にM&A取引では、選択する州法の違いにより当事者の権利に大きな影響をもたらす場合もある。経験を積んだ米国弁護士であれば、州法による違いや影響を分析し、的確なアドバイスや結果をもたらしてくれるはずだ。

 

モンローシェリダン・リードモンローシェリダン・リード
外国法事務弁護士(米国ニューヨーク州)
慶應義塾大学 法科大学院 特任講師
info@monroe-legal.com
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